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【河内マキエイ】夜空を舞うオーロラを撮影する

【河内マキエイ】夜空を舞うオーロラを撮影する

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オーロラに魅せられて、アラスカに在住して撮影を続けている写真家、河内マキエイさん。
オーロラ撮影に必要な機材、カメラ設定についてお話いただきました!

初級者編:オーロラ撮影にはどんな機材が必要か?
中級者編:オーロラ撮影に適したカメラの設定とは?
応用編:連続写真をつないだタイムラプラス映像とは?

初 級 者 編

オーロラ撮影にはどんな機材が必要か?

フルサイズ/ 焦点距離14mm/ ISO3200/ F2.8/ 5秒露光

フルサイズ/ 焦点距離14mm/ ISO3200/ F2.8/ 5秒露光

自分のカメラでオーロラを撮影したい――――。
コンデジやミラーレスなど気軽に旅に携行できるカメラの高感度性能も以前に比べて格段に向上しています。コンデジでもISO感度、長秒露光(バルブ)、絞りが任意に設定可能なマニュアル機能を備えた機種なら、誰でもオーロラ撮影を楽しめるようになったことは喜ばしいことです。長秒露光時の手振れを防ぐための三脚、そして、幸運にもめぐり合ったオーロラをしっかりと記録してくれるメモリーがあれば撮影準備OK。あとはネットやガイドブックとにらめっこしながら行き先を決めるだけです。

コンデジ(センサー1/1.7型)焦点距離36mm/ ISO400/ F2.8/ 15秒露光

コンデジ(センサー1/1.7型)焦点距離36mm/ ISO400/ F2.8/ 15秒露光

一般的にオーロラを観測できる時期は、私の住む米国、アラスカ州フェアバンクスでは、白夜(厳密にはフェアバンクスの緯度では白夜とは言えませんが)の季節を除いた8月中旬から4月中旬の約8ヶ月間です。オーロラは冬に出現すると考えている方が多いせいか、撮影に来られる方も12月下旬から3月くらいの冬期に集中しています。時にマイナス50℃を下回る寒空を舞うオーロラの輝きは、夜の闇と雪と氷の銀色のみに支配された季節に、鮮やかな色彩を与えてくれる天からの贈りもの。これほどの寒さから想像するのは難しいかもしれませんが、アラスカ内陸部の夏は40℃近くにまで暑くなることも。夏と冬の気温差は実に90℃以上。

APS-C/ 焦点距離14mm/ ISO800/ F2.8/ 10秒露光v

APS-C/ 焦点距離14mm/ ISO800/ F2.8/ 10秒露光v

地球上にはもっと暑いところや寒いところがありますが、これだけの気温差があるところは珍しいとか。極地では、この気温差に耐え、いかなる気象条件のもとでも確実に作動してくれる信頼性がメモリーには要求されます。私が愛用しているサンディスクのメモリーカード、エクストリームプロはその点では唯一無二の相棒といってよいでしょう。
寒気にさらされたカメラの本体は、相当に冷えています。そのままカメラを屋内に持ち込むと、カメラが瞬時に結露するばかりでなく、カメラが凍ってしまうことも。屋内に入る前にはマフラーなどでしっかりくるんだり、ジップロックに入れるなどの工夫を忘れないでください。特にレンズキャップをしないまま、カメラを屋内に持ち込むとレンズ表面が瞬時に凍り、しばらく撮影ができなくなってしまいます。

中 級 者 編

オーロラ撮影に適したカメラの設定とは?

APS-C 焦点距離10.5mm/ ISO800/ F2.8/ 17秒露光

APS-C 焦点距離10.5mm/ ISO800/ F2.8/ 17秒露光

フルサイズ 焦点距離14mm/ ISO3200/ F2.8/ 1秒露光

フルサイズ 焦点距離14mm/ ISO3200/ F2.8/ 1秒露光

レンズの設定

多くが光学ファインダーを備えていないコンデジでは、暗所でのフレーミングが難しいというデメリットが挙げられます。光学ファインダーを備えた一眼レフタイプならその問題がありません。一眼タイプは一般的にコンデジよりも受光素子が大きい分、高感度に優れ、ノイズが少ないというメリットもあります。

オーロラ撮影に便利なレンズは20mm、24mm、28mm(以下すべて35mm換算)の広角レンズです。これらは前景に森や山並みを入れて撮影するのにもってこいです。オーロラの動きや広がり方によって焦点距離を素早く調節できる超広角ズームレンズも重宝します。私は14~24mmのズームレンズを常用しています。ブレイクアップと呼ばれ、明るさも動きも最大級の瞬間はまさに圧巻。辺りはまるで真昼のように明るく照らされ、雪面には自分の影がきるほど。明滅躍動しながら全天から降り注ぐオーロラのどこに視点を定めたらいいのか戸惑ってしまいます。こんなときは、15mmくらいの対角線魚眼レンズが活躍します。

フルサイズ 焦点距離14mm/ ISO3200/ F2.8/ 1.3秒露光

フルサイズ 焦点距離14mm/ ISO3200/ F2.8/ 1.3秒露光

フルサイズ 焦点距離14mm/ ISO3200/ F2.8/ 1秒露光

ISOの設定

オーロラを撮影する際の設定は、レンズの絞りを開放にしたうえで、ISOを高感度に(だいたいISO1600~6400くらい)します。次に露出時間を長秒露光に設定します。時に激しく動き回るオーロラの姿を鮮明にとらえるには、なるべく短い露光時間で撮影するに越したことはありません。そのためにはISOをより高感度に設定するのですが、高感度になるほどノイズも増えてくるのでどの程度までが許容範囲かあらかじめつかんでおくことです。

オーロラの明るさはその時々によって大きく異なります。一度撮影した画像を確認し、それを元に最適な設定にもって行きます。
参考までにISO6400で露光時間1秒、絞りF2.8で見た目にも満足の行くオーロラ写真が撮れたとします。その場合、感度と露出を変えてほぼ同等の露光を得るには右記の表のようになります。

APS-C/ 焦点距離20mm/ ISO800/ F2.8/ 8秒露光

APS-C/ 焦点距離20mm/ ISO800/ F2.8/ 8秒露光

ホワイトバランスの設定

ホワイトバランスですが、通常はオートでおおむね良好な結果が得られます。ただし、街明かりなど、なんらかの人口光が雪面や雲に影響している場合はカラーバランスが大きく転ぶ場合がありますので任意での設定が必要になります。夕暮れ時に現れるオーロラの場合、空の印象を優先して太陽光に、真夜中での撮影で、特にオーロラが実際よりも派手すぎる蛍光色を帯びた緑に写ってしまう場合は(4000Kくらい)に設定することもあります、オーロラの色は酸素原子や窒素原子の発光といわれており、肉眼では緑白色に見えることが多いのですが、撮影することによって肉眼ではとらえずらい青紫、赤紫、暗赤色やピンク、オレンジ色を確認できることもあります。一期一会のオーロラ撮影では、RAWデータで撮影しておくと後に現像で色味や露出を調整できるので安心です。

ピントの合わせ方

オーロラは地上約100キロ前後かそれ以上の高度で起こる現象です。ですから、ピントは無限遠に合わせます。ライブビュー機能がある場合は星を利用します。ピントが合っていないと星像がぼんやりとかすんだり、ドーナツ状に見えたりします。星が鮮明な明るい一点として像を結べばバッチリです。ライブビュー機能がない場合、日中の明るい時間帯にオートフォーカスで遠くの景色にピントを合わせておきます。それができなかった場合はレンズのピントの目盛りを無限遠(∞)に合わせます。ただし、∞のマークが必ずしも正確な無限遠を指していないことがあるので注意が必要です。

APS-C 焦点距離14mm/ ISO800/ F2.8/ 7秒露光

APS-C 焦点距離14mm/ ISO800/ F2.8/ 7秒露光

ピンボケ写真のほとんどがこのケースにあたります。いずれの場合も、ピントを合わせた後は、テープなどでレンズのフォーカスリングが動かないように固定します。使用する三脚は、ある程度がっちりしたものを選びます。軽いと雪の上では安定しません。雲台は2ウェイではなく3ウェイのものを、ボールヘッドならよりベターでしょう。シャッターを切る際のブレを防ぐためのレリーズ(リモートスイッチ)もご用意下さい。

フルサイズ 焦点距離14mm/ ISO6400/ F2.8/ 3秒露光

フルサイズ 焦点距離14mm/ ISO6400/ F2.8/ 3秒露光

カメラの保温は必要ですか?

カメラに保温用カバーを使用したり、カイロをまきつける方を目にしますが、余計なものをカメラに装着することによってファインダーが見づらくなったり、設定変更等の動作に手間取るため私は使用しません。バッテリーさえ冷やさなければカメラは作動してくれます。予備のバッテリーは内ポケットに入れて常に人肌で暖め、オーロラの出現を待つ間は、カメラは三脚に載せたままでバッテリーははずしておくこともあります。

応 用 編

タイムラプス撮影には、最適なメモリーカードを

最近のカメラにはタイムラプス機能内蔵のものも増えてきました。この機能を使うと等間隔での連続撮影ができますから、刻一刻とその表情を変えていくオーロラを撮影し、後に編集して動画を作ることができます。その際、重要なポイントなるのがメモリーの書き込み速度と容量です。タイムラプス撮影では一晩で千カット前後、またそれ以上の写真をJPEGとRAWで記録することもあります。そのためにも書き込み速度の速い大容量のメモリーは必需品です。サンディスクのエクストリームプロがここでも活躍しています。

さらに、F値のより明るい(F1.2やF1.8など)レンズを使用することで明るいオーロラならばハイビジョンによるリアルタイム動画の撮影も可能になってきました。ハイビジョン動画の撮影ではメモリーの性能、信頼性がより厳しく要求されるでしょう。

オーロラのタイムラプスムービー<br />
『AURORA NIGHT~オーロラ夜曲~』ダイジェスト版

オーロラのタイムラプスムービー
『AURORA NIGHT~オーロラ夜曲~』ダイジェスト版

210年前、初めて世界一周した日本たちが見たオーロラ

ところで、皆さんは日本人として初めて世界一周した人々のことをご存知でしょうか。それは江戸時代の出来事でした。1793年11月下旬、仙台藩の米などを積み江戸へと向けて石巻を出航した若宮丸という千石船が途中に暴風雨のために遭難、十六人の乗り組み員を乗せてあてのない漂流が始まります。半年後、奇跡的にたどり着いたのが当時のロシア領、現在の米国アラスカ州、アリューシャン列島のとある島でした。生き残った漂流民たちはロシア本国に送られ、漂流から10年後、首都ペテルスブルグでロシア皇帝との謁見(えっけん)が許されます。そこで希望した四人がロシア初の世界周航船で日本に戻ることになりました。奇しくも彼らは、日本人として初めて世界一周の旅をすることになったのです。ロシア滞在中には気球やプラネタリウムなどを目撃した彼らでしたが、日本へ帰国の途上、デンマーク、イギリス、現在のブラジル、マルケサス諸島やハワイを周遊、カムチャッカを巡ります。
長崎にたどり着いたのが1804年秋のこと。実に一年二ヶ月を要する船旅でした。この旅に同行したロシア人乗組員の1803年9月の日記には注目すべきオーロラの記述があり、すばらしいスケッチも残されています。そうです、漂流民たちはオーロラを見ていたのです。初めて世界一周した日本人たちが210年前に異国の地でオーロラを見ていたなんてとてもワクワクします。鎖国の時代、一般の人々にとって海外の情報など皆無に等しかったはずです。漂流民たちの驚きはいかほどのものだったでしょう。そんなことをつらつらと想いながらアラスカの夜空を眺めていると、今、見たままの感動を記録に残せる私たちは、幸せな時代に生まれたものだと感じたりもするのです。

写 真 家 河内 マキエイ

1966年岐阜県各務ヶ原市生まれ。
出版社に入社後、アニメーションの製作部署に配属。松本零士原作の作品などを担当する。
1997年、退社後旅したアラスカ北極圏に魅せられ、2003年にグリーンカードを取得し移住。フェアバンクス郊外の電気、水道、ガスが通じていない原野で森を開墾し、家を造りながら暮らす。アラスカ内陸から北極圏を専門とするガイド会社ネイチャーイメージを運営。オーロラ撮影を始め、希少動物であるジャコウウシ観察や北極圏の秘境を歩くガイドを務める。

アラスカ州公認の野生のシロクマ観察ガイドとしてはただ一人の日本人。自ら建てたオーロラ観測キャビンもお客さんに大変好評だ。2013年春まで、2年3ヶ月に渡り、中日新聞、東京新聞等で、ウィークリーコラム「アラスカに暮らす」を執筆。「オーロラ ウォッチング&撮影ガイド」(誠文堂新光社)やガイドブック等にも写真や記事を提供している。
江戸時代、日本初の世界一周を果たした宮城県石巻の若宮丸乗組員の足跡を調査、紹介する「石巻若宮丸漂流民の会」の会員として、若宮丸が漂着したアリューシャン列島の島が果たしてどこだったのか。その知られざる謎に迫る旅を始めたところでもある。

ホームページ:
http://www.natureimage-alaska.com/

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