TBSで毎週日曜日午後6時より放送中の『世界遺産』。世界中の美しい自然遺産や文化遺産などに目を奪われる30分間だが、そのロケの裏側は想像以上に過酷だ。番組のディレクターでオフライン編集も担当する江夏治樹さんにG-DRIVE ArmorLock SSDを自身の編集環境に組み込んで使ってもらい、そのインプレッションを伺った。
写真・文●鈴木佑介/構成●VIDEO SALON編集部/協力●ウエスタンデジタル、TBSスパークル
■データ管理の安全性と編集速度の高速化を実現する
G-DRIVE ArmorLock SSD
SanDisk Professionalはプロの現場に対してどんなソリューションを提供できるのか? 今回はTBSで長い歴史を誇る人気番組『世界遺産』のディレクター、TBSスパークルの江夏治樹さんを取材した。世界遺産のディレクターとしてのキャリアは11年となる江夏さん。コロナ禍以前は撮影で文字通り世界中を飛び回っていたが、2021年現在は、自ら出かけられるロケは国内に限られ、海外ロケはリモートで現地のコーディネーターやカメラマンに指示を出し、届いた映像素材を自宅でオフライン編集している。そして本編集やカラコレ、テロップ入れは別スタジオで行い、番組を仕上げているそうだ(取材時2021年10月末時点)。
今回江夏さんに試してもらったアイテムはSanDisk ProfessionalのG-DRIVE ArmorLock SSD。こちらはUSB 3.2 Gen2接続のポータブルSSDで、読み書き最大1000MB/秒の転送速度を持つ。そして最大3mからの落下保護、1000ポンド(約450kg)の衝撃耐性、IP67の防塵・防水性を備えている。さらに、パスワードなしでスマートフォンを使った遠隔施錠・解錠ができる画期的なSSDだ。世界中のあちこちでのロケ経験を持つ江夏さんの目に、このG-DRIVE ArmorLock SSDはどう映ったのだろうか? 海外ロケが再開することをイメージしながら、その可能性について伺ってみた。
スマートフォンから遠隔ロックも可能
防水性能も備えた堅牢なSSD
SanDiskProfessional
G-DRIVE ArmorLock SSD
G-DRIVE ArmorLock SSD
オープン価格(1TB/実売38,280円)
受注生産品※
※G-DRIVE ArmorLock SSDでは1TBのほか、2TB(74,800円)、4TB(118,800円)の3つのラインナップを用意。価格は税込。
▲256bit AES-XTS形式ハードウェア暗号化対応のポータブルSSD。スマホアプリで、複数ユーザーのドライブアクセス権限の管理やアクセスの認証をできる。IP67対応の防塵・防水性能を備え、1mの水深に30分の耐久性を持つ。インターフェイスはUSB 3.2 Gen 2で最大1,000MB/秒の高速データ転送が可能となっている。
■世界遺産のロケと編集のフロー
世界遺産のロケは通常キヤノンEOS C300やC200などの4Kシネマカメラを中心に、時折EOS R5での8K撮影。加えてR5をドローンに積んで空撮したり、ハウジングに入れて水中撮影を行なっている。その美しく撮られた長めのカットを編集でつなぎ、物語を紡いでいくスタイルが世界遺産という番組のレガシーとなっている。番組で使用されるワンカットの尺は長い時は50秒に及ぶこともあるそうでじっくりと丁寧に撮影される。
そして、1回ロケに出ると、番組2本撮りが基本で、2カ所の世界遺産のロケハンとロケを合わせて日数は1カ月程度から長くて1カ月半。単純計算でも撮影データはかなりの容量になる。バックアップは宿泊先に戻ってからSanDiskのSSDなど信頼性の高いメディアに二重に行なっており、それを日本に持ち帰ってくる流れとなる。
秘境のような場所でロケを行うことが多い世界遺産では、撮影期間中は現地にベースキャンプを作り、テントで寝泊まりしながら、野外で撮影データのバックアップを行うことも多いそうで、ホテルのような快適な環境で寝泊まりできないこともあるという。昔はHDDへのコピーだったことに比べるとSSDのおかげでバックアップ作業が短縮化、少しでも休む時間がとれるようになった。ただ、問題はそのバックアップされたデータの保全である。
過酷な環境で撮影されたデータだからこそ撮影データの保全は完璧でないといけない。防塵・防水はマスト。しかも、治安が悪い国ではデータが入ったメディアが他の荷物と一緒に盗難される恐れもあるという。ダブルバックアップを取り、複数のスタッフで移送することで、片方のメディアが失われても、もう一方のメディアによって撮影データは守られる。加えて、データが他に流出することも防がねばならない。このG-DRIVE ArmorLock SSDであれば、もし盗まれても、スマートフォンでロックを解除しない限り、誰もそのデータにアクセスできないので、そんな事態になっても安心できると江夏さんは語る。
■『世界遺産』での過酷なロケの環境
アンデス山脈にある標高5260mのサンガイ山に登頂したロケの模様。ロケ日数は登山口から往復12日間。登山口(標高3200m)から山頂アタックのベースキャンプ(標高3600m)まで、ラバで荷揚げ。ベースキャンプまでは撮影機材やキャンプ装備、食料など合わせ、荷物の総重量は1t。ラバ1頭につき50kgの荷物を載せて運搬した。ベースキャンプから山頂(標高5260m)まではポーターがひとり15〜20kgの機材を背負って運んだ。
■従来の10倍速の読み書き速度を実現
世界遺産での編集作業のワークフローは、現場で撮ってきた素材(4K)を中間コーデック(Avid DNxHR)に変換して、6TB程度の大容量HDDを複数挿せるUSB3.0のクレードルに入れて、そこから直接素材をAvid Media Composerに読み込んでオフライン編集→本編集という流れ。内容にもよるが、中間コーデックに変換した素材は6TBのHDDで2〜3本となるらしい。
今回G-DRIVE ArmorLock SSDを自宅でのオフライン編集において江夏さんに実際に使用してもらい、編集ストレージとしての体感を語ってもらった。その第一声は「圧倒的に速い」であった。これまでHDDから直接読み込んで作業すると再生がカクつくことがあったが、そういったストレスが皆無。再生がカクつく場合はレンダリングをすることで対処してきたが、G-DRIVE ArmorLock SSDから読み込んだ場合は、レンダリングなしでもサクサク。同じPCの性能でも使用するストレージが違うだけでかくも作業ストレスが軽減するものなのか、と少し興奮冷めやらぬ面持ちで江夏さんは語った。
昔は2K(HD)で済んだものが、今は4Kが当たり前になり、最近では8K撮影も行うことが増えてきたということで「4Kで編集しているから仕方がない」と諦めていたが、このG-DRIVE ArmorLock SSDを使うことで編集時間を短縮でき、次の企画など他のクリエイティブ作業に時間を費やせるだろう、と江夏さんは語る。時は金なり、である。実際ストレージの速度を計測してみたところ、普段使用されているHDD(シングル運用)が読み書き100MB/秒であるのに対し、ArmorLock SSDはスペック通り1000MB/秒を超え、数値としても10倍の速度が出ていた。
江夏さんにEOS C200の撮影素材を中間コーデックに変換しない「ネイティブ」な状態で編集作業のテストをしてもらったが、体感として快適そのものだったという。これであれば撮影素材のバックアップや正副のデータコピーの高速化に加え、変換作業時間が減り、かつ中間コーデックを使用しないことで編集データ・撮影アーカイブの容量のコンパクト化が図れる。「早速上司にArmorLock SSDの経費購入を申請しましたよ」と笑顔の江夏さん。大容量の8TBや12TBのSSDの登場もこれから期待したいと語ってくれた。
■従来環境とスピードテストで比較
▲上は江夏さんがこれまで使用してきたUSB3.0接続のHDD。下はUSB3.2 Gen2接続のG-DRIVE ArmorLock SSD。およそ10倍ほど読み書きの速度が向上している。