カメラやゲーム、映像と何でも楽しめるデバイスになったスマートフォンで、圧倒的に不足しているものがある。ストレージだ。スマホライフを充実させるmicroSDを紹介しよう。
通話もできるインターネット端末というイメージで登場したスマートフォンだが、そのうちカメラやゲーム機として使えるようになり、さらには、音楽や電子書籍、映像と何でも楽しめるデバイスに進化した。とにかく生活や趣味に密着し、デジタル化したものはすべて引き受けようという貪欲なデバイスに成長したのである。
しかし、何でもスマートフォンで楽しもうとするとストレージが足りなくなる。コンテンツはますます増え、どんどんリッチになっているからだ。
■スマホの機能に見合わなくなったストレージ容量
例えばカメラ。今のスマホ内蔵カメラはゆうに1600万画素を超え、1枚あたりのファイル容量は5MB前後となっている。1日平均10枚撮る人なら1カ月で300枚(単純計算で1.5GB)。同じ端末を2年間使うなら写真だけで36GBだ。内蔵ストレージが32GBしかなかったら、どこかに移すしかない。
4K動画撮影ができるスマホも続々と登場しているが、1分間で500M~750MB(30~60fps)とストレージの消費が激しい。ほんの数十分の撮影で内蔵ストレージは埋まってしまうのだから、今のところ「普段使いは難しい」というのが正直なところ。ただ、テレビやディスプレイはもう4Kが当たり前なので、先のことを考えれば4Kで撮影しておきたい。
音楽ファイルもMP3の時代とは桁が違う。一般的なハイレゾ音源フォーマットであるWAV(96kHz/24bit)の場合、1曲(約5分)で約150MB。アルバム10枚もスマホに入れれば3GBを超える。音楽好きの人たちの中にはスマホと音楽プレーヤーを両方持ち歩く「2台持ち」も多いが、荷物や充電する機器が増えるのは面倒で悩ましい。
高品位なコンテンツを手軽に扱えるようになった一方で、スマホの内蔵ストレージはすぐに一杯になってしまう。現在のスマホは機能にストレージ容量が見合っていないともいえる。スマホメーカーは価格を抑えるためストレージにコストはかけたくないし、ユーザーも値上げしてほしくない。これはもう宿命みたいなものだ。
でも、幸いなことに、AndroidスマートフォンにはmicroSDメモリカードスロットという解決手段がある(一部機種を除く)。本体にmicroSDを挿入し、それを拡張ストレージとして使う。他のスマートフォンにはない特権だ。
■使って実感、大容量の余裕
使い方は簡単。機種にもよるが、最近は、SIMカードを入れるスロットと一緒になっているモデルが多い。シャープ「AQUOS R2」の場合は側面のスロットをピンを使って開け、カードをセットする。
これで前準備は終了。続いて、必要なデータを内蔵ストレージではなく、microSDへ保存するよう設定しておこう。
microSDを使うメリットの1つに、「ギガが減らない」ことがある。
最近は音楽や映画のネット配信サービスが急速に普及しているが、Wi-Fiのない場所ではモバイル回線でIPパケットを大量に受け取ることになってしまう(=ギガが減る)。ところが、サービスによってはコンテンツをスマホにダウンロードする機能を提供している。家のWi-Fi環境でダウンロードしておけば、電車や学校、会社でもちょっとした時間に楽しめるし、画質も安定する。なによりギガが減らない。
「Amazon Prime Video」で試してみた。一番高画質な設定では1時間あたり約1.8GB。120分の映画なら1本3GB超になる。内蔵ストレージだけなら映画数本で終わりだが、大容量のmicroSDがあれば、例えば好きなアニメを1クールすべて保存するとか(30分×12話で約10.8GB)、海外ドラマを1シーズン持ち歩く(1時間×24話で約43.2GB)といったぜいたくな使い方もできそうだ。
microSDに保存するもう1つの大きなメリットは、スマートフォン自体が壊れても(落として画面を割ったとか)、中のカードさえ無事なら写真やビデオが救出できること。スマホを修理に出すとき、カードを取り出しておけば安心。ヒミツの動画を他人に見られる心配はない。これも重要だ。
■microSDの選び方
Androidスマホを手にしたら、必要な容量のmicroSDを同時購入して最初にセットしよう。microSDはたくさん種類があってどれを選べばいいのか分かりにくいと思ったら、まず5つのポイントをチェックしてほしい。
(1)容量
まずは容量。現状、64GBがコストと容量のバランスに優れていておすすめだ。ただ、映像や写真の趣味を持っている、映像コンテンツを大量にダウンロード持ち歩く人は128GB以上を選ぶと安心だ。
(2)転送速度
次に転送速度。書込み速度、読取り速度の2種類がある。
書込み速度は、コンテンツをメモリーカードに保存する時のスピード。例えば、Amazon Prime Videoやハイレゾ音源など重いデータをダウンロードする際に、書込み速度が速いカードを使えば、ダウンロードの待ち時間を短縮できる。
読取り速度は、メモリーカードに保存したファイルを読み出すスピード。読取り速度が速いカードを使えば、撮りためた写真やビデオのサムネイル表示にイライラせず快適に使える。
書込み速度や読取り速度がパッケージなどに記載されていないカードは、転送速度が保証されていない、遅いカードの場合が多い。書込み速度や読取り速度が記載されており、数字が大きいものを選ぶと、快適にスマートフォンを使える。
(3)スピードクラス
スピードクラスは動画撮影時の最低保証転送速度を表している。動画の撮影では一定速度で書き込み続けられないと、撮影が止まったり、コマ落ちしてしまうため、最低保証の書込み速度が規定されている。歴史的な経緯から3種類の表記があるので知っておくとカード選びの参考になる。
スピードクラスは、クラス2からクラス10まであり、クラス10なら10MB/秒以上だ。クラス4以下は価格は安いが転送速度は遅い。例えば動画撮影ではハイビジョン(720pまで)が限界なので、今となってはおすすめできない。フルHD以上の動画を撮るならクラス10以上を選ぼう。
さらに、UHSスピードクラスという規格がある。UHSは「ウルトラ・ハイ・スピード」の略。カードとスマートフォンの両方がUHSに対応しているとき、この数字が有効になる。U1が最低10MB/秒、U3が最低30MB/秒の速度を保証してくれる。U1ならHD動画、U3なら4Kビデオにお勧めだ。
3つめがビデオスピードクラス。V6からV90まである。フルHD動画ならV10以上、4Kビデオを撮るならV30が良い。
(4)アプリケーションパフォーマンスクラス
アプリケーションパフォーマンスクラスは、新しく策定された規格で、アプリケーションの実行と保存に最低必要なランダムの処理速度の目安となる。A1とA2があり、A2の方が高速にアプリケーションを実行できるのでアンドロイドの内部ストレージ拡張機能を使う場合は、カードを選ぶ基準としてチェックしたい。
(5)信頼性(ブランド)
最後にもっとも重要なのが信頼性だ。microSDを見ても、それがどのくらい信頼できるかは分からない。当たり前だが、外見はどれも同じ。そういうときは信頼できるブランドを選ぼう。
今回取り上げるサンディスクは、1999年にSDカードを共同開発した3社のうちの1社。しかもmicroSDはサンディスクら2社が開発したTransFlashカードが元になった規格だ。そして、サンディスクはウエスタンデジタルのブランドの一つであり、ウエスタンデジタルが三重県四日市市で製造した日本製のフラッシュメモリーを上海工場でアッセンブリしている。信頼ある日本製のフラッシュメモリーを使い、多くのホスト機器メーカーとの互換性を誇るブランドを選ぶと後々も安心だ。
サンディスクのmicroSDラインナップは豊富。容量と転送速度によって大きく3つに分類され、好きなコンテンツをすべてため込みたいとか、スマートフォンを使って4K動画の作品を作りたいという人のために400GBのカードまで用意している。
中でも10月に新製品として登場した「サンディスク エクストリーム microSDカードシリーズ」は、読取り速度が最大90MB/秒、書込み速度は最大70MB/秒(32GB、64GBモデルは最大60MB/秒)と最新スマートフォンに最適だ。容量も32GBから400GBまで拡大し、さまざまな用途に使える。また「レスキュープロデラックス」というデータ復旧ソフトが付いてくるため、誤ってデータを削除してしまった、などの万が一の時でも安心。さらに製品は無期限保証となっている。
サンディスクのmicroSDラインナップ
※:16GBはU1非対応 ※※:32GBはA1対応
■なぜ転送速度が重要なのか
サンディスクのラインナップを見ても分かるように、同じ容量でも転送速度でグレードや価格が変わるのがmicroSDだが、実際にどのくらい差があるのだろう。
まず「A1 SD Bench」というmicroSDの速度を測るAndroid用アプリで、スピードクラス4のスタンダードと、クラス10でV30の新エクストリームを比較してみた。
結果はこの通り。スタンダードが読取り21.22MB/秒、書込み9.7MB/秒だったのに対し、最新のエクストリームでは読取り40.24MB/秒、書込み33.81MB/秒を記録した。読取りで約2倍、書込みに関しては3倍以上の差だ。装着する端末にもよるが、高速なカードを使ったらそれだけメリットがあることが分かる。
次にサムスン「Galaxy S9」でmicroSDに保存した200枚の画像(1枚10MB)を「ギャラリー」アプリで表示させると、スタンダードでは全ての画像のサムネイルが表示されるまで1分20秒かかったが、読取り速度の速い最新のエクストリームはたった21秒だった。
最後にPCからmicroSDに1.4GBの動画ファイルを転送してみたところ、スタンダードでは2分58秒かかったが、書込み速度の速い新エクストリームでは約43秒と、なんと4倍近い差が出た。スペック表の数字の違いが、そのまま体感できる結果となった。
■スマホで何でもできる今だから
microSDはスマートフォンに入れっぱなしで長く使い続けるものだから、信頼性や耐久性が大事だ。そこは耐衝撃や耐振動、防水で温度変化にも強く、元祖microSDカードといもいえるサンディスクのものが安心。SD/microSDで信頼と実績のブランドといえばサンディスクだ。
容量は64GBあれば普通は困らないが、写真や動画を撮るのが趣味という人はた128GBはあった方がいい。ただ、自分が「必要」と思う容量より1クラス上を視野に入れることをおすすめしたい。というのも、ストレージを追加して余裕を実感すると、それまでと少し使い方が変わってくるから。もっとたくさん写真を撮りたい、4K動画に挑戦したい、映画のダウンロードもやってみたいと再び容量不足を感じることもあるだろう。
大容量のコンテンツを快適に扱うには転送速度やスピードクラスなどのカードのパフォーマンスも重要だ。最近のスマホの高性能を十分に生かせるカードを選ぼう。スマホの環境が良ければ、日々のエンターテインメントを思う存分、快適に楽しめる。そのために必要なのは、たった1枚。高速で大容量、高信頼性のmicroSDだ。さあ、お気に入りのスマホを使い倒そう。
この記事はITmedia Mobile より転載しています。