列車や鉄道風景を撮影されている写真家、長根広和さん。鉄道写真撮影に必要な機材、カメラの設定についてお話しいただきました!
鉄道写真を撮るために必要な機材とメディアは?
鉄道写真といえば、高速で走ってくる列車を撮るのがメインとなります。動いてくる列車を理想の位置でとらえるためには、高速連写が必要になってきます。最低でも秒間5コマは欲しいところで、秒間8コマあればストレスなく撮影することができるでしょう。もちろん、理想の位置に列車が来た一瞬に、一枚だけシャッターを切るという「一枚切り」という方法もありますが、初心者にはとても難しいテクニックなので、カメラの連写機能を利用することをおすすめします。カメラを選ぶ時は、まず連写性能の優れたものをチョイスするとよいでしょう。
この鉄道写真には欠かせない「連写」ですが、カメラの連写性能をフルに発揮するためには、転送速度の速いメディアが必要になってきます。メディアの性能が悪いがために、シャッターが切れなかったという言い訳はしたくありません。サンディスクのメモリーカードにはさまざまなグレードがありますが、鉄道写真にとって一番のおすすめは、やはり「エクストリームプロ」です。初心者にはグレードが高すぎるのではないかと思ってしまうかもしれませんが、じつは逆なのです。初心者だからこそ、カメラの性能をフルに発揮できる環境を作り、そのカメラで思いっきり撮影テクニックを磨くのが上達への近道なのです。
レンズはどのようなものを準備したらよいですか?
鉄道写真には美しい風景の中を走るものや、車両をメインに捉えたものなど様々です。鉄道風景写真ならば広角~標準レンズがメインになりますし、車両写真ならば望遠レンズ系がメインとなります。
また、鉄道写真は撮影地の制約がとても多いジャンルです。単焦点レンズで被写体に寄るというようなことが難しいので、ズームレンズがおすすめです。
鉄道写真ならではのカメラの設定を教えてください。
高速で走ってくる列車を撮影するのが基本ですから、何よりも重要なのはシャッター速度の設定です。シャッター速度が遅いと列車がブレてしまいます。ですから、フルオートモードで撮影することはおすすめできません。「シャッター速度優先モード」(Tvモードなど)に設定し任意のシャッター速度を設定できるよ うにしなくてはなりません。初心者には難しいかもしれませんが、シャッター速度と絞りをすべてコントロールできる「マニュアルモード」(Mモード)でもOKです。
では、どのくらいのシャッター速度で撮影すればよいのでしょうか。広い風景の中をゆったりと走る列車を撮影するのならば1/500秒程度でOKです。望遠 レンズで車両メインに撮影するのであれば、1/1000秒程度のシャッター速度が必要で、見かけの速度が速くなる広角レンズで撮影する場合は1/4000 秒といった高速シャッターが必要になってきます。
もちろん、これらは在来線での話であって、新幹線撮影をする場合はさらに高速シャッターが必要になってきます。何事も経験で、撮影をしているうちに「このレンズでこのスピードなら、このシャッター速度だ!」という感覚がつかめてくると思います。
天候が悪い時など、速いシャッター速度が厳しそうな時は・・・・・
悪天候で露出を稼げない状況も当然出てくるでしょう。ですが、シャッター速度だけはどうしても譲るわけにはいきません。
天候が悪いのでシャッター速度を下げてしまったら、列車はブレてしまうので、作品が成立しなくなってしまいます。その場合はISO感度を上げて対応しましょう。
なるべく低感度で撮影する方 がクオリティの高い写真になりますが、最近のカメラの性能は驚くほど良いので、ISO1600程度までは何ら気にすることなく使用して大丈夫です。
「流し撮り」にチャレンジしてみよう!
走行する列車を高速シャッターでカッチリと止めて撮影するのが鉄道写真の基本ですが、颯爽と走り抜ける列車の「動感」を表現したいとは思いませんか?そんな時に最適なテクニックが「流し撮り」です。低速シャッターに設定して、列車の動きに合わせてカメラを振り抜いて撮影する技法です。そうすることによって、流れる背景の中を列車が走り抜けるという、とても動きのある作品に仕上がります。
流し撮りはシャッター速度の設定がポイント。
通常は1/125秒や1/60秒程度のシャッター速度を選択します。シャッター速度を遅くすればするほど、疾 走感はグングン増しますが、難易度もそれ以上に上がっていきます。
まずは1/125秒程度のシャッター速度で練習をしてみると良いでしょう。カメラの振り方のコツは腰の使い方です。手でカメラを振るのではなく、カメラをしっかりとホールディングして腰の動きでカメラを振るようにしましょう。
流し撮りは誰でもすぐに作品が撮れるというものではありません。プロでもよく失敗をしてしまうテクニックです。とにかく練習あるのみのテクニックですが、決まった時の爽 快感は最高ですよ。
「流し撮り」は連写性能が成功率アップにつながります。
列車のスピードに合わせるようにカメラを振り、「ここぞ」という瞬間にシャッターを押すというのが流し撮り。
ですが、高速で走っている列車を追い続けている時に、「ここぞ」という瞬間を判断するのはとても難しいものがあります。そこで、列車を追いながら、カメラの連写機能をフルに動かして撮影すると成功率 がグンと上がります。
秒間10コマを超えるような性能を持つ高級カメラであるほど確率は上がっていきます。
ここでも、当然カメラの連写性能はフルに発揮さ れなくてはいけませんよね。やはり、前述したようにメモリーカードの性能がここでも重要になってくるのです。
列車の走行シーンや、美しい風景の中を走る列車を撮影するというのが鉄道写真の定番ですが、作者が心に想い描く鉄道を写真に表現してみるというのも一興です。
前述しました「流し撮り」も、作者が感じた列車のスピード感を表現するわけですから、鉄道イメージ写真の一つと言えるでしょう。
例えば、黄昏時の駅のシーンや、朝日に輝く列車のボディを狙う。信号機や踏切だけを狙ってみたり、わざと列車をブラして表現してみるなど、表現方法は無限大です。
ただし、注意をしなくてはならないことがあります。
それは、説明をしなくては相手に想いが伝わらないということです。
あまりにも自分の世界に入ってしまい、撮影意図がなんだかわからない作品にしてはいけません。誰に見てもらっても、作者の想いが相手に伝わっていく作品づくりが大切です。
鉄道写真は一瞬の勝負。決定的チャンスは絶対に逃さない!
鉄道写真の厳しさは、自分でシャッターが切れないということだと私は考えています。構図の中で自分がここだと思う場所に列車が来た一瞬がシャッターチャンスで、そのタイミングにただシャッターを切っているにすぎないのです。
そう、シャッターは列車が切らせているわけです。では、カメラマンがするべきことは何かというと、人それぞれの感性でフレーミングし、列車を迎える最高の舞台を創り上げることだと私は思っています。
それがカメラマンの個性であり作品とな るわけです。その一瞬を確実にとらえるために、サンディスクのハイスペックカードはなくてはならない相棒なのです。
1974年横浜生まれ。大学卒業後、鉄道写真家・真島満秀氏に師事。青春18きっぷなどのJRポスター撮影や、時刻表表紙写真撮影、鉄道趣味誌などを発表の場として活躍。車両そのものの機能美や力強さを表現した写真に定評がある一方、ドラマチックな鉄道風景写真にファンが多い。「列車の音が聞こえてくるような作品」をモットーに全国の鉄道を追いかけている。
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